炎とコーヒー焙煎の関係

焙煎方法には、それぞれ得意分野があります。大型焙煎機の強みは、一定量を安定して焼き上げる再現性です。焙煎プロファイルをもとに熱のかけ方を管理し、同じ味を継続的に届けることに向いています。
一方、手網焙煎の強みは、少量の豆に対してその場で細かく調整できる自由度にあります。香りや色の変化だけでなく、豆が膨らむ様子、網の中を転がるスピード、重さの抜け方を手元で感じ取りながら、振る速度や角度、炎との距離を秒単位で変えていきます。
この違いは、味づくりの方向性にも表れます。大型焙煎機が「狙った品質を安定して再現する」ことを得意とするのに対し、手網焙煎は「その日の豆の状態に合わせて個性を引き出す」ことを得意とします。
珈琲焙煎舎がスモールバッチを主軸にする理由は、ここにあります。1回120〜150グラムの小ロットだからこそ銘柄ごとに焼き方を切り替えやすく、テスト焙煎と調整を重ねながら、豆のポテンシャルを丁寧に引き出せます。
そのうえで、安定した供給が必要な場面では直火式焙煎機も併用し、手網焙煎で培った判断を火力や時間設計に反映しています。個性と安定性を役割分担で両立させることが、私たちの焙煎方針です。
インタビュー
当店で出している珈琲に、特別な豆を使っているわけではありません。
それでも、豆の旨味をいちばん引き出す焙煎のおかげで、いつもの一杯が、ちゃんと光る味になる——そう感じてもらえたらうれしいです。
銘柄にもよりますが、冷めていくほど甘みが増して、クリーミーになる珈琲もあります。
当店は、一般的な機械釜ではなく、直火の手網で焙煎した豆を扱っています。
手網は一度に120〜150グラムほどしか焼けないので、生産効率はよくありません。それでも、機械式の焙煎釜だけでは出しにくい、奥のある味を目指しています。
豆の銘柄ごとに、合う焼き方もちがいます。
毎日、毎回、人の手で焙煎しているので、極端な話をすれば「毎回、味がちがう」とも言えます。けれど、それも珈琲のおもしろさだと思っています。
「おっ、今日は甘みが強いね」「このあいだより酸味がおさまってるね」——そんな小さなちがいを、味わいとして楽しんでもらえたら、それ以上の望みはありません。
