コーヒー meets アート〜 コーヒーと最近の自分

コーヒーを「買う」から、「考える」へ

― 珈琲焙煎舎を起点に、コーヒーを学び、街を歩き、自分の価値基準をつくる試み ―

1.はじめに|コーヒーを学びたい人は、どこへ行けばいいのか

現在、コーヒーに興味を持つ人は増えています。

「もっとコーヒーについて知りたい」
「豆の違いを知りたい」
「自分の好きなコーヒーを見つけたい」
「おいしいコーヒーの淹れ方を知りたい」

しかし、コーヒーについて知りたいと思ったとき、どこで学べばよいのでしょうか。

たとえば、多くの人が利用するコーヒーショップで店員に質問することはできます。しかし、そこでは基本的にコーヒーを購入することを前提として知識が提供されます。

つまり、

コーヒーを買う場所はたくさんある。
しかし、コーヒーを買わずにコーヒーについて学ぶ場所は、意外と少ない。

この疑問が、現在の活動を考える出発点になっています。


2.珈琲焙煎舎のワークショップ|「買う前に、知る」

珈琲焙煎舎では現在、コーヒーについて学ぶワークショップを開催しています。

90分、2,500円、お土産付き。

ここで提供したいのは、単に「おいしいコーヒーを飲む体験」ではありません。

コーヒーを実際に飲み、比較し、考えることで、

「自分は何をおいしいと思うのか」

を参加者自身が考える時間です。

幸いなことに、現在も参加者は集まっています。

これは、

「珈琲焙煎舎のコーヒー豆を買いたい人」だけではなく、
「コーヒーについて学びたい人」が存在している

ことを示しています。

ここから、珈琲焙煎舎にとって新しい可能性が見えてきます。


3.見えてきた矛盾|学んでも、豆を買うとは限らない

一方で、ワークショップに参加した人が、そのまま珈琲焙煎舎のコーヒー豆を購入してくれるとは限りません。

これは現実としてあります。

通常の商売で考えれば、

ワークショップ参加
→ 商品購入

という流れを期待します。

しかし、実際には必ずしもそうならない。

そこで、

「なぜ、コーヒーを学びたい人は、学んだ店の豆を買うとは限らないのか?」

という新しい問いが生まれます。

そして、この問いを無理に解決して販売につなげるのではなく、この矛盾そのものを含めて、珈琲焙煎舎の活動として考えてみることにしました。


4.「未完|コーヒー」|コーヒーの価値は誰が決めるのか

その問いから生まれた企画の一つが、村井が企画する**「未完|コーヒー」**です。

コーヒーには、さまざまな情報があります。

  • 産地
  • 品種
  • 精製方法
  • 生産者
  • 希少性
  • 品質
  • 評価
  • そして価格

私たちは、こうした情報を通してコーヒーを選んでいます。

しかし、

それらの情報を知る前に、コーヒーそのものを味わうことはできないだろうか。

「未完|コーヒー」では、すべての豆を100g/1,000円に設定し、銘柄を開封するまで分からないようにしました。

価格と名前という、コーヒーを選ぶ際の大きな手がかりを一度取り除きます。

そして、まず飲んでもらう。


5.価格と名前を外してみる

通常であれば、

産地・品種・希少性・評価

価格

購入

飲む

という順序になります。

「未完|コーヒー」では、これを逆転させます。

飲む

感じる

自分で判断する

コーヒーについて考える

という順序です。

おいしいと思うかもしれない。

そうでもないと思うかもしれない。

そのどちらも否定しません。

なぜなら、

その人がどう感じたのかも、そのコーヒーの価値の一部だからです。

ロースターが提供できるのは、生豆を選び、焙煎し、品質を保つところまで。

そのコーヒーを飲んで、

「好き」
「嫌い」
「また飲みたい」

と判断するのは、飲み手です。

だから「未完」。

コーヒーの価値を完成させるのは、商品をつくった側だけではない。

飲み手もまた、その価値をつくる。


6.11月の講座|今度は「街」を教室にする

この考えは、11月に予定している府中市生涯学習センターのコーヒー講座にもつながっています。

講座では、受講生が府中市内の自家焙煎店を実際に訪れ、コーヒー豆を購入する「初めての自家焙煎店でのお買い物(仮称)」を行います。

目的は、単に豆を買ってもらうことではありません。

受講生に、

「コーヒーをつくる人と話す」

という経験をしてもらうことです。

例えば、

  • この豆はどのような味ですか?
  • どのように焙煎していますか?
  • どのような抽出がおすすめですか?
  • なぜ、この豆をおすすめするのですか?

と店主に尋ねます。

そして豆を購入して教室に戻ります。


7.店主の言葉を、自分で確かめる

次の授業では、受講生がそれぞれの店から購入した豆を実際に抽出します。

ここで重要なのは、

店主の説明を「正解」として覚えることではありません。

店主から聞いたことを、自分で実際に飲んで確かめることです。

例えば、

「この豆は甘みがあります」

と店主から聞いた。

では、本当に自分にも甘く感じるのか。

「この抽出方法がおすすめです」

と言われた。

では、その方法で淹れると自分はどう感じるのか。

ここで、

作り手の言葉
×
自分の味覚

という関係が生まれます。


8.「消費者」から「コーヒー関係人口」へ

この企画では、受講生を単なる消費者として捉えていません。

最初は、

コーヒーを買う人

だった人が、

コーヒーについて質問する人

になり、

さらに、

作り手の考えを聞き、自分の感覚と照らし合わせる人

になる。

つまり、

「消費者」から「コーヒー関係人口」へ。

これが、この講座の重要な目的の一つです。


9.府中コーヒータウン構想|一店舗ではなく、街全体を体験する

この取り組みは、珈琲焙煎舎だけの活動ではありません。

府中市内には、それぞれ異なる考え方や焙煎方法を持った自家焙煎店があります。

そこで、

A店とB店のどちらが優れているか

を比較するのではなく、

A店もB店も、それぞれ違う。

という前提で並べてみます。

受講生が複数の店舗を訪れることで、

「府中には、こんなに違うコーヒーがある」

ということに気づいてもらう。

その結果、

個々の店舗の価値ではなく、複数の店舗が存在することで生まれる「街としての価値」

をつくっていきます。


10.「府中=コーヒータウン」という認識をつくる

府中コーヒータウン構想では、特定の店舗を中心に据えることは考えていません。

また、

  • 焙煎度
  • 抽出方法
  • 価格
  • 店舗の雰囲気
  • コーヒーに対する考え方

を統一することもしません。

むしろ、

違うからこそ、面白い。

という考え方です。

一店舗では見えないものが、複数店舗を巡ることで見えてくる。

その集合によって、

「府中にはコーヒー文化がある」

という認識が生まれることを目指します。


11.3つの活動をつなぐもの

ここまでの活動を整理すると、次のようになります。

ワークショップ

コーヒーを飲んで、自分の感覚を知る。

初めてのお使い

街へ出て、作り手と話す。

店から買った豆を飲む

作り手の言葉と、自分の感覚を比較する。

未完|コーヒー

価格や銘柄を外し、自分自身で価値を判断する。

府中コーヒータウン

一つの店ではなく、街全体の多様なコーヒーを体験する。

このすべてに共通しているのは、

「コーヒーの正解を教える」のではなく、「自分でコーヒーについて考える機会をつくる」

という考え方です。


12.珈琲焙煎舎が目指す場所

この活動を通じて、珈琲焙煎舎の役割も少しずつ変わっていきます。

これまでのコーヒー店は、

コーヒーを買う場所

として考えることができます。

しかし、珈琲焙煎舎が目指しているのは、その先です。

コーヒーについて学ぶ場所。

さらに、

コーヒーについて考える場所。

そして、

自分自身のコーヒーの価値基準をつくっていく場所。

です。


13.最終的な問い|コーヒーの価値とは何か

高いコーヒーが、必ずしも自分にとって良いコーヒーとは限らない。

有名な産地だから、好きとは限らない。

希少だから、好きとは限らない。

専門家が評価しているから、自分も好きとは限らない。

反対に、安いコーヒーだから価値が低いとも限りません。

では、

コーヒーの価値とは、いったい何なのでしょうか。

この問いに、珈琲焙煎舎として一つの答えを与えるのではなく、

ワークショップで飲んでもらう。
街へ出てもらう。
店主と話してもらう。
豆を買ってもらう。
自分で淹れてもらう。
そして、もう一度考えてもらう。

そのための場をつくる。


14.「売る」ことから始めない

珈琲焙煎舎の活動には、一見すると矛盾があります。

コーヒー豆を販売する店なのに、

「必ず自分たちの豆を買ってください」

とは考えない。

むしろ、

「まず、自分の好きなコーヒーを見つけてください。」

という立場を取る。

その結果、他店のコーヒーが好きになることもある。

珈琲焙煎舎のコーヒーを好きになることもある。

どちらでも構わない。

重要なのは、誰かに決めてもらった答えではなく、

自分で飲み、自分で考え、自分で選んだ

という経験です。


15.「未完」であること

この活動には、最初から完成した答えを用意していません。

コーヒーの価値も、

ワークショップの意味も、

珈琲焙煎舎の役割も、

府中のコーヒー文化も、

まだ「未完」です。

だからこそ、

コーヒーを飲むことから、問いが始まる。

そして、その問いを持って街へ出る。

人と話す。

また飲む。

考える。

自分なりの答えをつくる。

その繰り返しそのものを、珈琲焙煎舎から始めていきたい。

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