開催報告
コーヒー豆を見ることから始める〜テイスティング・ワークショップ
講師:飯島里沙(珈琲焙煎舎・店主/焙煎人)
日程:2026年5月17日(日)
時間:11:00~12:30、14:00~15:30、17:00~18:30の3部制
会場:珈琲焙煎舎
参加費は2,500円(税込)
内容:初心者向けのコーヒーテイスティング・ワークショップ
参加者の皆さんには、4種類のコーヒーを試飲しながら、焙煎人による解説とともに、コーヒー豆そのものを観察していただきました。4種試飲、焙煎人による解説、そしてお土産付きです。
今回のテーマは、「コーヒー豆を知って、コーヒーを分かろう」です。
珈琲焙煎舎にて、初心者向けのコーヒーテイスティング・ワークショップを開催しました。
店頭には、焙煎されたコーヒー豆が並んでいます。
お客さんは実際に豆を見ながら、わからないことをロースターに聞き、自分に合ったコーヒー豆をゆっくり探すことができます。
今回のワークショップは、そうした珈琲焙煎舎の日常の延長線上にあるものです。
なぜ、豆を見ることから始めたのか
一般的なコーヒーのテイスティングでは、まず液体としてのコーヒーを飲み、香りや味の違いを言葉にしていくことが多いと思います。
しかし今回のワークショップでは、最初にコーヒー豆そのものを見ることから始めました。
講師は、珈琲焙煎舎の店主であり、焙煎人である飯島里沙です。コーヒー抽出の専門家がバリスタだとすれば、飯島は焙煎の専門家です。であれば、液体になったコーヒーだけでなく、豆そのものについて話を聞くほうが、珈琲焙煎舎らしい内容になるのではないかと考えました。
コーヒー豆は、農産物です。
日本で飲まれているコーヒーの原材料のほとんどは、海外から輸入されています。国や地域が変われば、気候も、土も、水も、育つ品種も異なります。トマトやぶどうに産地や品種による違いがあるように、コーヒー豆にも、育った国や地域、気候、土、水、品種による違いがあります。ワインを選ぶときに、ぶどうの品種や産地が手がかりになるように、コーヒーも豆を見ることで、味を想像するヒントが見つかります。そして、コーヒー豆のおもしろいところは、原材料である豆そのものを、店頭で実際に観察できることです。
色を見る。
艶を見る。
形を見る。
膨らみを見る。
香りを確かめる。
そこから、味の方向を少しずつ想像することができます。
今回のワークショップは、ロースターがお客さんに伝えられることのひとつとして、**「豆を観察すること」**に焦点を当てて企画しました。
当日の流れ
ワークショップの最初には、参加者の皆さんに簡単な自己紹介をしてもらいました。日常的にコーヒーを飲んでいる方。もっと豆のことを知りたい方。珈琲焙煎舎に関心を持ってくださっている方。それぞれの関心を持った皆さんが集まりました。最初に配布したのは、何も表記されていない紙コップに入った4種類のコーヒー豆と、ワークシートです。
この段階では、銘柄は伝えていません。参加者には、テーブルの上に並べられた4種類のコーヒー豆を、まず黙って見比べてもらいました。普段、ローストされたコーヒー豆をここまでじっくり観察する機会は、あまりないと思います。まして、4種類を同時に見比べることは、さらに少ないはずです。しかし、豆を並べて比較してみると、それぞれの違いが少しずつ見えてきます。
豆の色。
形。
大きさ。
表面の艶。
焙煎による膨らみ方。
全体の印象。
こうした要素を見比べながら、参加者には、自分が気づいたことをワークシートに書き留めてもらいました。これは、ロースターが焙煎後の豆を観察している行為に近い、擬似的な体験でもあります。
豆から粉へ。香りの変化を体験する
焼き豆の観察が終わった後、4種類のコーヒー豆を同じ条件で粉に挽きました。豆の状態では静かだった香りが、粉に挽いた瞬間に大きく広がります。この変化は、参加者にとっても印象的だったようです。
豆のときと、粉になった後では、香りの立ち方が大きく変わります。見た目だけではわからなかった違いが、香りによって感じ取れるようになります。この段階で、コーヒー豆は抽出される前から、すでに多くの情報を持っていることに気づきます。参加者はワークシートにメモを取りながら、豆から粉へと変化していくコーヒーを観察していました。そして、粉に挽いた段階で、4種類のコーヒー豆の名前を伝えました。
今回使用した4種類のコーヒー豆
今回のラインナップは、エチオピアが3種類、ブラジルが1種類。合計4種類です。エチオピアは、華やかな香りや明るい酸味を持つコーヒーとして知られています。ただし、同じエチオピアでも、地域、品種、精製方法、焙煎度によって印象は変わります。今回はそこに、キャラクターの異なるブラジルを1種類加えました。ブラジルを比較対象として置くことで、エチオピア同士の小さな違いが、より見えやすくなるのではないかと考えたからです。
実際に行ってみると、開催する側にとっても発見がありました。3種類のエチオピアの違いを感じ取ることは、中級者でも簡単ではありません。しかし、ブラジルが入ることで比較の軸が生まれ、参加者の集中力も高まっていきました。
エチオピア/イルガチェフェ アリーチャ〔ウォッシュド〕
ミディアムダークロースト
生産地域:エチオピアのゲデオ、イルガチェフェ、アリーチャ村。
品種:エチオピア在来種の希少品種(デガ)
精製方法:ウォッシュド
高地適応に優れた品種で、フローラルな華やかさと、クリアな酸味が特徴です。
エチオピア/イルガチェフェ バンコ・ゴティティ〔ウォッシュド〕
焙煎度:ライトロースト
名称:Grade 1 – Banko Washed
生産地域:イルガチェフェ、バンコ・ゴティティ
品種:在来種、Heirloom
標高:1,600m〜2,300m
精製方法:ウォッシュド
クリーンな印象と明るい酸味を中心に、前半の比較対象として用意しました。
エチオピア/グジ シャキソ〔ナチュラル〕
焙煎度:ライトロースト
名称:Kayon Mountain Farm – Shakiso – Grade 1、2022 Harvest Natural Guji
生産地域:グジ、シャキソ、カヨン・マウンテン農園
品種:在来種、Heirloom
標高:1,900m〜2,200m
精製方法:ナチュラル
バランスが良く、ジューシーな酸味、トフィー、リッチキャラメル、ベリー、やわらかなフローラル感が感じられるコーヒーです。
ブラジル/カラメリッチ
焙煎度:ダークロースト
生産国:ブラジル
地域:ミナスジェライス州セラード地区。
農園:世界最大規模の農協であるCOOXUPE、コシュペ社によって生産されています。組合員は約17,000農家です。
標高:850m〜1,200m
品種:カトゥアイ、ムンドノーボなど
精製方法:ナチュラル
ミナスジェライス州セラード地区の豆を使用した、焦がしカラメルのような深煎りのコーヒーです。ミルクとの相性も良い豆です。
抽出とテイスティング
豆を観察し、粉に挽き、銘柄を確認した後、実際にコーヒーを抽出しました。
粉にお湯を注いだときの香り。蒸らしている間に立ち上がる香り。抽出が終わった後、カップから感じられる香り。そして、少し口に含んだときの味わい。参加者には、コーヒーが変化していく過程を順番に確認してもらいました。今回のワークショップでは、最初から味を当てることを目的にはしていません。大切にしたのは、違いを正解として当てることではなく、自分が何に気づいたのかを、自分の言葉で確かめることです。
酸味がある。
甘さを感じる。
香ばしい。
苦味がある。
余韻が残る。
冷めると印象が変わる。
そうした小さな違いを、自分の感覚で拾っていく時間になりました。
参加者の反応
ワークショップ終了後、参加者の皆さんにアンケートへご協力いただきました。今回のアンケートでは、特に「豆を見てから味を想像する」という体験に対して、さまざまな反応がありました。普段は、味の説明や産地名を見てコーヒー豆を選ぶことが多いかもしれません。しかし、実際に豆の色、艶、形、膨らみを見比べることで、味わいの違いを自分の感覚で探すきっかけになったように感じます。
開催して分かったこと
今回のワークショップを開催して、いくつかの発見がありました。まず、コーヒー豆の見た目を観察する体験は、初心者の方にも十分に伝わるということです。色、艶、形、大きさ、膨らみといった要素は、専門用語を知らなくても見ることができます。
そこから、
「これは軽そう」
「これは香ばしそう」
「これは苦味がありそう」
といった想像が始まります。
また、1種類の豆だけを見るよりも、4種類を並べて比較することで、違いが見えやすくなることも分かりました。特に今回は、3種類のエチオピアにブラジルを1種類加えたことで、比較の軸が生まれました。違いの大きい豆がひとつ入ることで、似ている豆同士の小さな差にも目が向きやすくなります。豆の状態から粉に挽いた瞬間、香りの印象が大きく変わったことも、参加者の皆さんにとって分かりやすい体験だったようです。
見る。
嗅ぐ。
砕く。
抽出する。
飲む。
この順番を通すことで、コーヒー豆が液体になるまでの変化を、ひとつの流れとして体験することができました。ロースターは、焙煎後の豆を見て、香りを確認し、状態を判断しています。今回、その視点の一部を参加者の皆さんと共有することで、店頭での豆選びにもつながる体験になったと感じました。
第二回ワークショップについて
今回のワークショップでは、豆を見ること、香りを確かめること、飲み比べることを通して、コーヒー豆の違いを観察しました。
次回は、今回の体験をさらに発展させ、産地ごとの違いに注目します。コーヒーの香りの説明を聞いて、「少しポエミーで、よくわからない」と感じたことはありませんか。
でも、コーヒー豆は農産物です。トマトやぶどうに産地や品種による違いがあるように、コーヒー豆にも、育った国や地域、気候、土、水、品種による違いがあります。ワインを選ぶときに、ぶどうの品種や産地が手がかりになるように、コーヒーも豆を見ることで、味を想像するヒントが見つかります。そして、コーヒー豆のおもしろいところは、原材料である豆そのものを、店頭で実際に観察できることです。
第二回のワークショップでは、珈琲焙煎舎が取り揃えている4つのエリア、アジア、アフリカ、中米、南米のコーヒー豆を観察します。
豆を見て、砕いて、飲んでみる。その順番を通して、コーヒー豆の違いを楽しんでもらえる内容です。
開催日は、2026年6月中旬を予定しています。
詳細は、あらためてお知らせします。
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ご参加ありがとうございました
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。今回のワークショップを通して、コーヒー豆は味の説明だけで選ぶものではなく、見た目、香り、手元の印象からも楽しめるものだと、あらためて感じました。
コーヒー豆は、味の説明だけで選ばなくても大丈夫です。
色を見る。
艶を見る。
形を見る。
膨らみを見る。
香りを確かめる。
そこから、自分に合ったコーヒーを探す楽しみが始まります。店頭でも、気になる豆があれば、ぜひ実物を見比べてみてください。珈琲焙煎舎では、これからもコーヒー豆専門店として、豆を知ることから始まるコーヒーの楽しみを伝えていきたいと考えています。
文:むらいじゅん(2階の部屋)

